「指示」でも「待つ」でもない子どもとのかかわり方

こんにちは!

CAN!Pスタッフの長﨑です!

今回は「指示」でも「待つ」でもない子どもとのかかわり方について、CAN!Pラボでの様子をもとにお伝えします!

指示する?待つ?

子どもたちとかかわるとき、誰しも「本当はこうしてほしいんだけどなあ」と思うことがあると思います。

家でゲームばかりしている子に対して、

(ゲームばかりじゃなく、もっと勉強をしてほしいなあ)とか、

手遊びをして話を聞いていなさそうな子どもに対しては

(しっかり話きいてほしいなあ)とか、

おもちゃの取り合いをしている子たちには

(仲良く使ってほしいなあ)とか、

例を上げたら数え切れません。

そんなとき、どのように子どもとかかわっているでしょうか。

そのときによくあるのが「指示」か「待つ」だと思います。

例えば、ゲームばかりしている子の事例であれば

「ゲームばかりしてないで、勉強もしなさい」

と伝えるのが「指示」。

(自分から進んで勉強をしてほしいから、もう少し様子を見ておこう)

というのが「待つ」。

しかし、それでは逆に反発してしまったり、待っても待ってもゲームから離れなかったりするのは、よくあるシチュエーションです。

似たような状況はCAN!Pラボでも当然起こります。

そんなときに、CAN!Pラボでは、「指示」でも「待つ」でもないかかわり方として「大人の願いを伝える」というかかわり方をよく使います。

「大人の願いを伝える」とはどういったことか、CAN!Pラボでの様子と合わせて説明します。

ひみつ基地プロジェクト

現在、CAN!Pラボで動いているプロジェクトの一つが、ひみつ基地プロジェクトです。

「CAN!Pラボの一室にあるクローゼットの中をみんなで使えるひみつ基地にしちゃおう!」というもので、5、6年生の3人がチームになって取り組んでいます。

この中にあるのが開発中のひみつ基地

子どもたちから「まだひみつ!」と言われているので、

中の様子は完成してからお見せします。

そして、子どもたちからでてきたやりたいことが

「ひみつ基地の中に小さな机を置きたい」というものでした。

それ自体は良いアイデアなのですが、私の中で引っ掛かったのは、その調達方法です。

子どもたちは、「ネットで買う」というのです。

子どもたちのプロジェクトには、材料費としての予算があるので、購入できないわけではありません。しかし、もし机を購入した場合、彼らの予算のほとんどがなくなってしまいます。

私の心の中には

(工作室にある木材で手作りすれば、材料費がかからないから、予算を他の装飾などに使えるのになあ)

(ただ購入するのでは「熱中する探究者」の在り方ではないなあ)

という思いがありました。

ここで、彼らへのかかわり方として、もし「指示」を選ぶなら、

「購入しないで自分たちで作りなさい」と伝えることになるし、

もし「待つ」を選ぶなら、

子どもたちが購入するのを見守る

ということになります。

大人と子どもの願いが交わる

では、「大人の願いを伝える」というかかわり方を選ぶならどうするのか?

今回は、ありのままに私の思っていること(願い)を伝えました。

「机をおくのはいい案だと思うけど、購入するんじゃなくて、自分たちで作ってほしいっていうのがゆうや(長﨑)の願いだな。理由は2つあるよ。1つは、他の装飾に使える材料費がなくなるから。机以外にもたくさん素敵なアイデアがでていたから、それも実現してほしい。もう一つの理由は、みんなに熱中する探究者になってほしいから。いつもより少しだけ頑張って自分たちの手でやってみることで、達成感やつくったものへの愛着を味わってほしいんだよね。」

もちろん、これだけでは、「じゃあ作る!」とはなりません。

しかし、指示するのではなく、願いを伝えるようにすることで、子どもたちもいったんこちらの思いを引き受けてくれます。

その上でで、子どもたちからは、子どもたちの願いが出てきます。

「せまいばしょだから折りたためるようなものがいいんだ!」

「持ち運べるようにしたいから、木で作ると重くていやだ!」

「夏の工作室は暑いし蚊が多いからいやだ!」

これでようやく、大人の願いと子どもの願いが交差する、つまりどちらも満たされるようなやり方はないかという話し合いが始められます。

結果として、「すでにCAN!Pラボにあるカゴと木の板を組み合わせて机を作る」という案に決まり、みんな納得して作り始めることができました。

CAN!Pラボで余っていたカゴ

木材ではない材料を使うという、新しいアイデアに行きつきました!

作成中の机の天板。新たな発想も!

「願いを伝える」ことのよさ

「願いを伝える」ことのよさは、大きく2つあると感じています。

一つは、子どもと対等に話し合いができるようになるということです。

大人の願いを伝えることで、子どもから見て「なぜ大人が要求してきているのか」がわかります。そうすれば、「やらされている」「押し付けられている」という感覚がやわらぎ、対等に話し合うことができるようになります。

もう一つは、子どもに選択と決定の機会を残せることです。

CAN!Pのビジョンである「自らの意志で選択し、決定できる人に溢れる社会をつくる」に近づくためには、子どもたちにも「選択と決定の機会」が必要です。だからこそ、指示することで子どもの行動を大人が決めてしまうのではなく、子どもといっしょに考え、一緒に決めていきたいと思っています。

その上で大人の「願いを伝える」ことは、大人の思いを子どもに受け取ってもらいつつも、決定権は子どもにあるので、子どもに選択と決定の機会を残すことができます。


ただ、ここまでの話は、あくまでも「指示」や「待つ」をやめようと言っているわけではありません。

危険がある場合や、他人の人権を侵害するような場合には、当然「指示」する必要も出てきます。

うまく環境が整っていれば「待つ」ことで子どもたちが自然と変わっていくこともあります。


また、願いを伝えればいつでも子どもたちが言うことを聞いてくれるというわけでもありません。

当然CAN!Pラボでも、大人の願いが伝わらないことが多々あります。

そのために、願いを伝えることとセットで、「対話できる時間の余裕がある」「別の選択肢を提示できる」「お互いが納得できる理由がある」などの要素が必要なこともあります。

(事実、机をどうやって用意するかの話し合いは、大人の願いを伝えてから作り方が決まるまで2時間ほどかかっています…)

しかし、「指示」や「待つ」に加えて、「大人の願いを伝える」という選択肢も持っておくことで、子どもとのかかわり方の幅が広がると思います。

終わりに

今回は、指示でも放任でもない選択肢として、大人の願いを伝えるというかかわり方を紹介しました。

子どもたちが「熱中する探究者」に近づき、「自らの意志で選択し、決定できる人」でいられるよう、私たち自身もいろいろなかかわり方を試し、探究しています。

引き続き、私たちの試行錯誤もお伝えしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。